【映画】メランコリア

メランコリアという映画を観ました。レイボーとカロナールとドンペリドンを服用して無理矢理体調不良を強制した挙句、夕飯をポカした最悪の状態で。全然体調悪いです。吐きそう。
この映画は私が一生不快だなんだと文句を垂れ続けている『ダンサーインザダーク』の監督の作品です。世界が終わる瞬間を描く、といういかにも私好みな設定だったので観てしまいました。本当に世界の終わりが好きなこと好きなこと。

主人公は鬱病の女性で、金持ちの夫がいる健常な姉がいる。主人公は突拍子もない行動や言動で人々を困らせ、不快にさせ、それで姉夫婦や周囲の人間からは疎まれている。主人公周りの人間も主人公もずっとうっすら不快だったんですけど、結局これって主人公視点で進むから人が不快に見えるのかなとも思う。それはそれとしてどう考えても鬱病の原因を作ったであろうパワハラ上司は普通に良いザマすぎる。
それでも主人公が不快に見えるのって、私が鬱病とかメンタルをやった事がなくて、身内にもそういう人はいなくて、知見としてないから分からないっていうのが大きいのかもしれない。メンタル不調の人がこの映画を観たら、彼女に同意するのだろうか。
正直、冒頭から中盤まではマジでつまらん。本当に退屈で退屈で、ぼーっと画面を見ては薬の効果が切れてきたのか、体調の悪化を徐々に感じるほど。翌日の外出があまりにも億劫になるくらい湧き上がってくる吐き気に、ひたすら耐えるだけだった。
変わるのは中盤以降、惑星メランコリアが衝突する事が分かったところから。姉の夫は科学者で、惑星は無事通り過ぎると予測をしていたが、その予測は外れ、自殺をする。大きくなっていく惑星に姉は精神を蝕まれ、死の気配に心が病んでいく。空には美しい惑星が煌々と輝いていて、どんどんと近づいて、冒頭の結婚式の雰囲気から一転、より世界静かになっていく。
その中で一人、妹だけが落ち着き払っていた。凪の様に静かで、穏やかな顔で曇天の中立っている。その頃にはもう、当初感じていた妹への不快感はどこにも無くなっていた。
惑星が近づき、地球の滅亡が眼前に迫る中、この姉妹の関係性は逆転している。最初は鬱病で情緒が不安定な妹と、そんな彼女に時折嫌気のさす今が幸せな姉とその旦那。そんな関係性だったのが、世界の終わりが示唆される事で妹の情緒は安定し、鬱病は快方へと向かっていく。反対に旦那は自殺し、自分の情緒も不安定になり、項垂れ、泣き叫ぶ姉。天体が迫る中、入浴すらままならなかった妹の身なりは整い、美しくなっていくが、対して姉は髪も整えず、服もどこかだらしない。そんな姉を呆れた様に、鬱陶しそうに見つめる妹の視線には既視感。それはきっと、冒頭に姉が彼女に向けた視線と全く同じ様なもので。全てが反対になり、秩序が崩壊を迎える様がとても面白くて、綺麗だと思った。
テンポ感は最初から最後まで何も変わらない。緩やかに週末を迎えていく。緩やかに関係が変わっていって、世界の色が変わっていって、そして全部燃えて無くなる。それなのに、中盤以降はとても面白い。世界の終わりで取り乱す気持ちはよく分かるため、そこに最初の不快感の様なものはないし、その上妹の落ち着きと美しさが、その恐怖とストレスを軽減してくれているからかとても見やすくなる。
そして世界が終わる瞬間が、たまらなく綺麗だった。強い風が吹き荒れ、草木が舞い上がる中で惑星に衝突した地球は一瞬にして崩壊して、地上に存在するものはあっという間に火に包まれて消え去っていくのが、すごく幻想的にも思えた。とてもいい映画だったなと今思えば思う。まあ、それはそれとして前半はガチでつまらん。

でも心身が弱っている時に見ない方がいい。爆裂に体調の悪い中見た私は割としっかり落ち込んでいるというか、なんだか気が晴れない。何がその要因になっているかは分からないが、落ち込んでいる。体調も悪い。原稿も進まない。そういう落ち込ませる様なものを作るのがとても上手い人、それがラース・フォン・トリアー。最悪。

ただ私は映画体験において、落ち込んだりムカついたり、というのが一番楽しくて素敵だと思うので、文句を垂れつつもそういう鬱映画が一番面白いと思っている。
私は自分の感情が良く分かっていなくて、何にストレスを感じるのか、何にムカついて、何に落ち込んで、どうしたらメンタル不調が起こるのか、自分の事ながらいまだに理解が出来ていない。ストレスの様なものは全部体調に出るせいで、その感性やアンテナが鈍いというのもあるのかもしれない。そんで多分メンタルは普通に強い方だとは思う。
これまでの人生はあまり良いものではなかった。小中は最悪の人間関係で、勉強も運動もできなくて、親も絶妙にズレているし、私の意見なんて当然聞いてはくれないから悩みなんて到底話せるはずもなく、遺伝性の体調不良で健常な日が少なく、人間生活がまともに送れないこともしばしば。それでも何故か、メンタルが壊れた事はなかった。本当に、メンタルだけはやたら強靭。それだけが誇り。
その自分が分からないもの、察せれないもの、普通の人なら簡単に分かるものを、分かりやすく映像を通して客観的に感じさせてくれるものがこういう鬱映画だと思っているから。私はこの落ち込みですら素晴らしいものの様に、いつだって感じる。
だから文句を言い続けるし、ダンサーインザダークの事は普通に不快だけど、嫌いじゃないというか。今回の作品も含めて、私はこの監督がかなり好きだと思った。手軽に分かりやすい感情変化を味わえる、そんな作品。私の様な感情に乏しい、世界に対して鈍感な社会不適合欠陥人間にぴったりだ思います。過去作も沢山観ていきたい。
ちなみに私が明確に好きだと言い切れる監督は彼以外にはアリ・アスター、白石和彌があげられる。人間をじっくりしっかりと不快に描けて、不安を明確に映像化してくれる人が大好き。私には白黒はっきりさせてくれたものを出してもらわないと何も分からないから。そして多分園子温も好きそう。

ともかく、普通に鬱々しい映画なのでおすすめはしない。
でも私としては題材的にも雰囲気的にもすごく好き。

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