アイスクリーム

ゆったり。足の間に身体を滑り込ませ、雪宮の太腿に頬を置いたり置かなかったりしながら寛ぐ。彼女はふと『あ』なんて短く言葉を発し、スマホから顔を上げた。
「アイス食べたい…」
雪宮は何も言わない。そんな彼の足の間から潔は雪宮を見上げ、ジッと見つめた。
「買って来てよー」
「…出た」
「は?なに?」
「買って来なよ、まだおやつの時間だし。明るいよ外」
「…やだ。着替えるの面倒臭い」
ムッと頬を膨らませ、おかんむり。雪宮は気持ち目を吊り上げ、断固とした姿勢を保つ。
「買って来てよ、雪宮」
「自分で行きなさい」
「なんで、やだ。いいじゃん、ねぇ、なんで」
「………自分で行って」
「むぅ……意地悪ゆきみや」
身体をこちらへ向けて、股の間で不機嫌な顔。いやいや、体勢、ギリギリアウトですけども。それからちょっとだけ拗ねたみたいな、どこか悲しげに眉を下げて可愛く上目遣い。キュルリとした表情で、潔は小首を傾げて雪宮の太腿に頬を乗せる。待て待て、正直言って可愛い。雪宮は思わず言葉も息も飲み込む。
「………ぅ」
「だめなの?」
「………はー、わかった。わーかりましたよ!行ってくるから!もう!」
完全に押し負けた雪宮は長く息を吐く。それから股の間に陣取る彼女の頬を両の手で包んで軽く揉んでやった。
『やめろ』なんて言うけれど手は特に払わずに意外にもされるがまま。顔をもちゃもちゃに潰されても可愛い子は可愛いままで。足元のかわい子ちゃんがやっぱり可愛いからとニヤニヤ笑っていた雪宮は『早く行け』と潔に腹を叩かれてしまうのだった。
「コンビニとサーティワンどっちがいいの」
「コンビニで良いよ」
「で、良いよ」
買いに行ってあげるのにその言い草はなんだと軽く睨めば、ムッとした表情。ソファーに頬を押し付けてじぃっとこちらを見る。無言で訴えかける彼女に負け、『ごめんね』と雪宮が謝ると『うん』と頷いた。
「アイス、雪見だいふく一個でいいよ」
「なんで?二つでいいじゃん」
「わけっこしたい、雪宮と」
極め付けには一緒に食べようと首を傾げて上目遣いの構え。雪宮はキュンとして唇を噛む。うちのお姫様は我儘であまりにも横暴な事が多いけれど、愛想が尽きないのはこんな事があるから。
スマホと財布をズボンのポケットに突っ込んだ雪宮は、行ってくるねと彼女の頭を撫でた。『待ってるー』なんて軽い声で、潔の視線は手元のスマホへ。その気まぐれな様に、猫っぽさを感じざるを得なかった。

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